ONE PIECE(ワンピース)5項目評価(空島編まで)【漫画レビュー】
漫画の概要
作者名:尾田栄一郎
連載雑誌:週刊少年ジャンプ
連載開始・終了時期:1997年~現在
巻数:既刊86巻
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連載20年を迎えた、現代が誇る代表的な漫画
5項目評価
①物語性=6点
仲間を集める段階からグランドライン突入(ローグタウンを出て樽を割るところ)までの、「海賊王、大剣豪、世界地図、勇敢なる海の戦士、オールブルー」を目指し海を航海していくんだろうという期待感はとても強かった。構成の仕方ひとつ見ても、子どもにも分かりやすい視覚を用いたギミックや、大人も盛り上がれる過去回収(キャラクターの登場も含めた)を用いた手法は、少年ジャンプの看板として見事だなと感じる。
そして、ワンピースは世界観作りに長けている。正直、「海賊王を目指す」って題材で、略奪もほぼほぼなく義賊的で死亡者もほぼでないって、海賊漫画として致命的だと思うのだが、そこをジャンプらしい「底の知れない海域を航海し、ワンピースを目指す冒険漫画」とすることで、とても上手く回避している。海はとても広いため、普通に剣と魔法の世界を描くよりも実は幅広い世界を描ける。ドラクエで船を手に入れたら一気に世界が広がるのと似たような感覚じゃないかなこれは。鳥山明先生へのリスペクトを強く感じて逆に心地いい。
それこそ、船(メリー号)や仲間のエピソードでたくさん山場を作れる。海賊(悪)と政府(正義)の現実とリンクした関係性なんかもファンタジーに落とし込めるし、ジャンプの信条である「友情×努力×勝利」も描きやすいし伝えやすいので、常に大人と子どもを離さない体制を作ることが出来る。
その結果、海賊漫画として機能していなくても人気がアンチを上回る。いろいろな事情をクリアできる世界観作りをしていると俺は感じる。
しかし、その先で七武海との戦闘が始まったことでインフレが始まり、「各々の目的の軸がぶれ始めたかな」と感じてしまったところが少し引っかかった(アラバスタで中期連載から長期連載に切り替わったのではないかと予想している)。
後、各々の目的があるから仕方の無いことなのだが、どうしても各々が活躍する話を長く挟んでしまうため、いいときはいいが悪い時は中だるみが長く続く。空島編はそれで評価を落とした印象。やはり七武海の登場から崩れてきたかなと。空島以降の現在、そこは捨てているようにも感じる。
②キャラクター=6点
前述したように、仲間集めの段階で各々にはっきりとした目的があり、それに向かっていく期待感が強かった。だが、作者が常に今の子どもたちを意識しているのか、時代に合わせてキャラクターも変化しているので、心を揺さぶられるほどではない。
③表現力=7点
空島編までとした場合、ドラゴンボールを意識した簡潔さと、決めコマでしっかりと書き込んでくる緻密さは明らかに新人離れしていた。
そして、特筆したいのが山場の盛り上げ方。正直、ワンピースが嫌いな人も山場は心に少し残っているのではないか。
仲間集めはおろか、ガイモンさんなどのサブエピソードも山場は心が揺れた。ゾロ(うまかった、ごちそうさま)、ナミ(当たり前だ!!)、ウソップ(ウソップ海賊団を!解散する!!)、サンジ(クソお世話になりました)、チョッパー(いい人生だった)、そして後々になるがロビン(いぎたい!)の、すべてのキャラクターが本当の意味で仲間になった場面は良くも悪くも多岐の記憶に残っている。これは決して当たり前ではない。
④オリジナリティ=7点
80年代後半の匂いを残しながら始まるも、現在まで古さを感じさせない時代に合わせるバランス感覚と修正力は流石ジャンプの看板。始まった当初は王道でありながら明らかに独立したオリジナリティがあり、特に感動描写のもっていき方は多くの漫画が参考にし、そしてただのごり押しになって散っていった。
だが、少々荷を背負いすぎているのか、いろいろなものに考慮している裏を感じてしまうのでこれくらいの点数。
⑤間の取り方=2点
間のとり方は上手くない。ワンピースのギャグノリが寒いと言われているのも、ここが下手だからの一言に尽きる。
作者の間のとり方は全体的に詰まっていて、あまりゆとりが無い(四皇登場以降は絵も詰まっている)。物語を長く続けるにあたり、話の量を増やすのでなく、ゆとりをもって呼吸を置いて描いていけば、半分の量で今と同じくらいの話数になるとは思うのだが……週刊連載でなおかつ日本漫画の看板という荷を想像すると、そんなことは堂々と言えない。
総合評価
28点
私的ランク
B(空島以降はCから漏れる)
最後に一言
作者は最後まで描き切れるんやろか……ちょっと荷を背負い過ぎよね。
そろそろ週刊少年ジャンプにワンピースと肩を並べそうな新人が出て楽させてあげられへんもんかのぉ。将棋の藤井君的なさ。
ワンピースに対する感想